第2部

家を出た私は、次男の家に向かった。
実は次男から連絡をもらったのがきっかけで、夫が新居を長男夫婦に渡そうとしていることを知っていた。翌日からその日が来る時のために、次男と連絡を取り合いながら対策を練っていたのだ。
「どうせなら一緒に暮らそう」
次男のその言葉が、今ここにいる理由だった。
数日後、夫から連絡が来た。
「お前と離婚する。今すぐに離婚届に名前を書け」
「分かったわ。じゃあ後でそっちに行くから」
私は離婚届に署名し、夫は大喜びに役所へ提出しに行った。こうして夫との離婚が正式に成立した。財産分与の件は後に弁護士を交えて話すことになり、この日はそこで話を終わらせた。
新居を出て2ヶ月が経った頃、長男から電話が来た。
「ローンの支払い18万ってどうなってんだよ!」
「え? 毎月18万を私が払ってたのよ。私がいなくなるんだから名義変更をするのは当然でしょ。だから長男のあなたに変えておいたのよ」
長男は「なんとかしろ」としか言わない。いい年したおじさんなんだから自分でなんとしなさい、と私は電話を切った。その様子を隣で見ていた次男は大笑いした。
翌日、仕事から帰ると、次男に助けを求め泣きついている3人がいた。

「頼むから金貸してくれ! じゃないと生活できないんだ!」
「秀樹さんお願いします! 私たちを助けてください!」
「秀樹、俺を助けてくれ! あんな18万なんてローン聞いてなかったんだ!」
リビングで3人が横並びに土下座をしている。その様子に思わずため息をつくと、元夫が私に気づいた。
「お前なんでここにいるんだ!」
「あの家を出てすぐに秀樹たちと一緒に暮らしてるの」
「そんなの聞いてない!」
「あなたに関係ないわ」

「それよりもだ、財産分与した金はいつ入るんだ?」
私は丁寧に説明した。
「あのね、あなたはずっと無職で、結婚生活の生活費は全て私が出してたの。しかも新居のローンも。それだけなら私の給料だけでもなんとかなった。でもね、あなたが自分のために好き勝手にお金を使ったせいで一銭も残らなかったのよ」
さらにとどめを刺す。
「分かってると思うけど、離婚の慰謝料を請求させてもらうから。そのつもりで」
「へ? 慰謝料?」
「だってあなた、愛子さんと浮気しているでしょ。知ってるのよ。次男がその現場を目撃して写真まで撮ってるんだからね」
次男が携帯から浮気写真を見せると、夫は力なくその場に座り込み、長男嫁は突如わめき散らしながら号泣し始め、長男はわなわなと震えながら大激怒した。
次男は力づくで3人を外へ放り出し、警察に通報した。10分後に駆けつけた警官は、暴れている長男を取り押さえ、号泣する長男嫁と呆然とする元夫も怪しい人物とみなして3人まとめて警察署へ連れて行った。

その後、3人は安いアパートで暮らすことになったという。しかし2人の浮気を知ってからの長男は人が変わったように2人に暴言を吐き続け、元夫はその暴言と罪悪感で心を病み、完全に働けない状態となった。長男嫁は働かない長男と働けない元夫の代わりに朝から夜まで働き詰めの日々を送っているらしい。しかも私へ払う慰謝料もあって、大変な毎日を送っているそうだ。
あの新居は売ってしまったという。あんな高額ローンを払えるわけもないのだから、当然と言えば当然か。
一方、私は次男とあの3人との家族の縁を切った。今後あの人たちと関わることはない。気付けの仕事も順調に行き、今では自分のお店も持つようになった。そしてまた自分だけの家を建てるつもりだ。そしたら次男夫婦を呼んで一緒に暮らしていこうと思っている。
今度こそ、家族3人で幸せな人生を送っていく。


